医療崩壊の目安って何?

最終更新日 2024年7月7日 by atsumu

2020年に発生した新型コロナウィルスによるパンデミックは、全世界に大きな影響を与えました。
先進国から発展途上国まであらゆる国々が緊急事態宣言を発令し、外出の自粛や不要不急のサービスの休業を命じるということは、過去の歴史でもなかったことです。

 

医療崩壊という言葉

こうした事態の中でにわかに注目されるようになったキーワードが「医療崩壊」という言葉です。
日本で発令された緊急事態宣言も、新型コロナウィルスが感染拡大することで医療崩壊が発生することを防ぐ展開を防ぐことが、発令の理由としてあげられていました。

医療崩壊の危機は 新型コロナ対応のベッド数と入院患者数データ

2020年毎日のようにニュースで流れるようになった言葉ですが、それでは具体的にどのような状況になることが「医療が崩壊した」ことになるのでしょうか?

実は医療崩壊という言葉は医師の人数不足や気力の低下、防衛医療の増加、病院経営の悪化といった様々な要因によって、安定的で継続的な医療を受けられなくなることを意味する俗語で、公的な機関が具体的な基準を設けているものではありません。
そのため医療が崩壊していると見なすかどうかは各個人の主観や思想によっても異なるものなのです。

 

2020年3月時点での日本の医療の状況

たとえば新型コロナウィルスが日本で流行し始めた2020年3月時点では、日本政府は現時点で日本の医療は崩壊していないという前提で会見を行っています。

しかし2020年3月時点での東京都で新型コロナウィルスの感染可能性がある人が、検査を希望した件数が41,105件であるのに対してPCR検査実施件数は964件と、検査を希望した人の9割は治療を受ける以前に検査を受けることが出来ない状態でした。

これは希望者全員に検査を行うことで医療物資が不足したり、医療関係者が疲弊することで医療の崩壊が発生することを防ぐための、仕方がない措置であるという考え方も出来ますが、検査を受けられなかったことが原因が亡くなっている人がいることも考えると、既に医療は崩壊していると考える人がいても無理はない状況です。

 

数十年前から日本の医療体制は既に崩壊していた?

そもそもこのキーワードが使われ始めたのは1990年代からのため、数十年前から日本の医療体制は既に崩壊していたともいえます。
ただこの定義は2020年の新型コロナウィルスの流行を乗り切れるかどうかについて、気にしている人たちの求めているものとは違うものでしょう。

新型コロナウィルスによる医療崩壊という観点からこの問題を定義するならば、その目安は新型コロナ対応に対応できるベッド数が入院措置を必要とする人間の数に足りているかどうかという部分で判断するのが合理的です。

この基準で考えると2020年4月28日時点でのベッド数に対する入院措置が必要な患者の割合は、東京都がベッド数2000に対して患者数2619人と超過しているものの、全国的には80%以下の水準となっているので日本の医療体制はギリギリのところで持ち堪えていると言ってよいでしょう。

 

自宅療養を余儀なくされている人は2000人以上

ただしこの数字はベッド数が足りなくなるのを防ぐために、平時であれば入院することが出来たような人々の入院を断り自宅療養させるなど、決して最善とはいえない対応を踏まえた上でのものです。

2020年4月時点では新型コロナウィルスに対するワクチンが存在しないこともあり、感染した人の多くは自分の命を守るために入院を希望していますが、それが拒否され自宅療養を余儀なくされている人は判明しているだけでも2000人以上にも上ります。

 

まとめ

ベッド数を増やすなどしてこうした望まぬ自宅療養者がいなくなり、さらに十分な医療キャパシティを確保できた時、日本ははじめて「新型コロナウィルスによる医療崩壊の危機を乗り切った」と宣言することが出来るでしょう。
その日が訪れることを願って止みません。